姉ヶ小路式

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姉ヶ小路式

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姉小路式 十三巻一冊

秘伝天爾波抄」「手爾尾葉秘傳」「姉小路てには抄」「姉小路てにはの傳」「和歌十三ヶ條」の名で傳ってゐるが、大體同一の書である。寛文十三年刊「歌道秘藏録?」、寛永三年刊「和歌てには秘伝抄?」「春樹顕秘抄」などは本書の増訂本である。木書は「手爾波大概抄」と同じく歌道の秘傳書であるが、更に分類が細かく一々例證を挙げてゐて遥に学術的である。即ち十三ヶ條口傳と稱して十三項目に分ち、各章古歌を引いて手爾波係結説明してゐる。而して本書は本居宣長の「言葉の玉緒」、富士谷成章の「脚結抄」等の源となったものと思はれる。即ち「てにをは」研究の初期に於ける最も優れた著作であると同時に後世徳川中期のてにをは研究の源泉となったものであることは注意すべきである。

【參考】

* 手爾波研究に於ける富士谷・本居兩家の開係につきて。上田萬年「言語学雜誌?」一ノ七。「國語のため」第二。

* 脚結抄詞の玉緒とに就きて。保科孝一國學院雜誌」八ノ一。

* 姉小路式の類書及其刋本について。亀田次郎「書物の趣味」第五號。

亀田次郎国語学書目解題」)

姉ケ小路式 語學書 十三卷一册

【著者】未詳

【諸本】祕傳天爾波抄手爾尾葉祕傳姉ケ小路てには抄姉ケ小路てにはの傳和歌十三ケ條等の名で傳はつて居る諸本は、内容に少しづつの相異はあるが、大體同一の書と認められる(相異は傳寫の間に生じたもの)。何れも寫本(春樹顯祕抄參照)。

【内容】第一卷は初に「やまと歌は、言の葉を以つて色見えぬ心の程をのべ侍る事なれば、てにをはをかんようとす」と云ひ、「十三ケ條口傳」と標してゐる。

(一)はねてにをはの事(らんの係辭)、

(二)治定してはぬる事(思はん、見ん等)、

(三)おさへつめてはぬる事、

(四)のべてはぬる事、

(五)かたうたがひの事、

(六)もろうたがひの事、

(七)爰をみてかしこをうたがひ、かしこをみて是をうたがふはね字、

(八)らし、

(九)あらぬ、

(十)ぬらし、

(十一)まし、

(十二)べき、

(十三)かゝへのかんなを略したるらんのとまり。

次に

第二卷 「ぞ」といふ事、

第三卷 「こそ」といふ事、

第四卷 「や」の字の事、

第五卷 「か」の字の事、

第六卷 「かは」といふてにはの事、

第七卷 志をいふ出葉の事、

第八卷 かんなを略する事、

第九卷 かなをやすむる事、

第十卷 同じでにをは一首の内にあまたおく事、

第十一卷 「かな」といふてにをは

第十二卷 ころとまりの事、

第十三卷 にてと云ふてには、

と項目を分け、各章古歌を引いで手爾乎波の用法説明してゐる。

【價値】本書は各卷の終りに、「右千金をあたふるとも一子ならではゆづるべからず」と記されてゐる歌道の祕傳書である。この點に於て「手爾波大概抄」(別項)等と類を同じくするが「手爾波大概抄」に比するとを類が細かく一々例證を擧げてゐて、遙に學術的である。

本書を増補訂正したものに「歌道祕藏録?」(十三卷一冊。寛文十三年刊)、「和歌てには祕傳抄?」(一卷。寶永三年刊)「春樹顯祕抄」(別項)がある。これらは本居宣長の「てにをは紐鏡」(別項)、「言葉の玉緒」(別項)、富士谷成章の「脚結抄」(別項)等の源となつたものと認められる。郎ち「姉ケ小路式」は、てにをは研究の初期に於ける最もすぐれたものであり、而して徳川の中期に於ける宣長成章等のてにをはの研究の直接的源泉となつたものである。

【參考】手爾波研究に於ける富士谷本居兩家の關係に就きて 上田萬年(言語學雜誌?一ノ七)

脚結抄と詞の王緒とに就きて 保科孝一(國學院雜誌八ノ一)

姉小路式の類書及その刊本について 龜田次郎(書物の趣味五) 〔龜田〕

(『新潮日本文学大辞典』)